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WISC-Ⅳの読み方-その凸凹は本当に発達の偏りでしょうか②

 

※2021年8月23日に内容の誤りを訂正しました。それ以前にお読みくださっていた方、申し訳ありません。

 

このコラムをお読みくださっている方は、おそらくWISC-Ⅳ(ウィスク)という知能検査(発達検査、と呼ばれることも)の名前を何度か聞いたことがあったり、すでに検査をお子さんが受けた経験がおありかもしれません。

 

WISCは5歳から17歳の子どもを対象にした知能検査です。本来は知能指数を得るために用いられていたものですが、知能を多方面から測定できることから、発達障害の概念が社会に浸透するようになってからは、知的発達のバランスを測る目的で用いられることが目立ってきました。

 

WISCの報告書に数値が記載されないことがあります。

このコラムでは、WISCの結果に数値が含まれていない場合に気をつける点をお伝えしたいと思います。

 

公的機関が報告書で数値を示さないのは?

 

学校からWISCを受けるよう指示があった時は、教育委員会の機関である教育相談室へ行って受けることがほとんどだと思いますが、自治体によっては学校でスクールカウンセラーが行う場合もあるかもしれません。

 

公的な機関が作成するWISCの報告書には、具体的な数値が記載されていないことが多いと以前のコラムにも書きました。

 

その理由として、まず第一に、数字によって無用に子どもや保護者の気持ちを傷つけないようにする配慮があるのだと思います。

 

さらに教育相談室や学校でWISCを行う目的は、子どもが通級や入級に適しているか、その子どもにどんな合理的配慮が必要か、というニーズに対して客観的な判断を行う資料としてWISCの結果を用いるためであって、決して診断や知的レベルの判定を目的としているわけではない、という理由もあるでしょう。

このような目的のためには、文章による記述(「この子どもには〇〇の支援が必要です」のような)が役に立つからです。

 

一方で、数字が用いられないために誤解が生じる可能性も否めないと思うのです。

以下にそのことについて詳しく述べてみます。

 

 

数値がないと、得意・不得意ははっきりわからない

 

WISCでは下の5つのカテゴリーについて、それぞれ数字(合成得点)が得られます。

 

  1. 全IQ  (FIQと表示されることもあります。知能全体を表す数値です)
  2. 言語理解(VCI)
  3. 知覚推理  (PRI)
  4. ワーキングメモリー(WMI)
  5. 処理速度(PSI)

 

これら5つについて、数字を用いずに結果を伝える場合は、『平均』『平均の下』などといった語句を用いることがあります。

これらの語句を「記述分類」といいます。

記述分類が示している数値の範囲を下の表に示しました。

 

記述分類

合成得点

非常に高い

130

高い

120129

平均の上

110119

平均

90109

平均の下

8089

低い

7079

非常に低い

69以下

 

ここで注意したいのは、下のような記述分類が記されていたとして、ケース2では『言語理解』が『知覚推理』より高い、とは言えない、という点です。

 

 

 

 

ケース1

ケース2

 

数値

記述分類

数値

記述分類

『言語理解』

90

平均

90

平均

『知覚推理』

78

低い

89

平均の下

二つの指標の差

12

 

1

 

差の有無

あり

 

なし

 

 

            

10歳0ヶ月の子どもを例に取ると、『言語理解』と『知覚推理』の間に11点以上の差がないと、理論的に「差がある」とは言えません。

その差が1~10点の範囲内なら、報告書で「差がある」とか「『言語理解』は『知覚推理』より高い」と書いてはいけないのです。

 

上の表のケース1では、『言語理解』が90、『知覚推理』が78で、その差は12点ですから、「『言語理解』は『知覚推理』より高い」と言うことができます。

 

また上の表のケース2では、『言語理解』が90で、『知覚推理』が89で、その差は1点しかなく、「『言語理解』は『知覚推理』より高い」とは言えません。

ところが記述分類を用いると、『言語理解』は『平均』、『知覚推理』は『平均の下』と表記されるので、あたかも差があるように見えてしまいます。

 

ケース2は極端な例と思われるかもしれませんが、実際はこのようなケースにはたくさん出会います

 

 

報告書に数値の記載がないときは?

 

とても理屈っぽい話になってしまいましたが、数値が示されない報告書では、凸凹は、はっきりとはわからない、という点をご理解いただけたら幸いです。

 

数値の記載がない報告書を見て、「うちの子は〇〇が××よりも苦手なんだ」とがっかりしなくても良いかもしれないのです。

そのような報告書をもらったときは、凸凹を気にするよりも、お子さんの発達の特性について検査者に十分に説明してもらいましょう。

 

どうしても凸凹が知りたい場合は、統計的な差があったかどうかを確認してください。

 

 

WISCをお子様の支援に役立てましょう

 

WISCを上手に利用して、お子さんの成長・発達のサポートに役立てられるといいですね。

当施設でもWISCを行っています。

 

学校でWISCを勧められた方はスクールカウンセラーからの学校でのお子様の様子を記した資料があれば、初回で検査を受けていただけます。

検査の2週間後に結果をお伝えします。

その際、報告書もお渡ししますので、学校での支援にお役立てください。

詳しくはサービス・料金をお読みください。

(竹田)