知能検査(児童用WISC・成人用WAIS)で発達障害かわかりますか?

 

答えはNo です。

知能検査は発達障害があるかどうかを調べるための検査ではありません。

 

知能検査の目的は何ですか

知能検査は「得意なことと苦手なことを知り、困っていることへの支援を考える検査」と説明されることが多いようです。

 

 知能検査を希望される方は、日常生活において何らかのお困りを抱えていらっしゃるはずです。仕事、学習、家庭、他者との関わりなど、知的な能力を求められる場面で生じる困り事に対して、その背景に考えられる知的な要因を推測し、困り事への具体的な対応を考えるための検査です。

発達障害の診断はどのように行われますか

そもそも当施設は医療機関ではないため、診断はできません。多くの方にはこの点がわかりづらいようですが、ご理解いただけると幸いです。

 

 診断は精神科(児童精神科)・心療内科の医師が行います。しかし医療機関でも知能検査のみを根拠に診断を行うことはまずないでしょう。何より重要なのは問診で収集する情報です。医師は初診時にご本人・ご家族から学校・家庭・職場などでの日常生活の様子について詳しく確認するでしょうから、これらをメモにまとめて持参するとよいでしょう。子どもの場合には乳幼児期からの生育歴を確認しますから、母子手帳を持って行くと役に立ちます。成人の患者さんも、児童期から思春期の学校や家庭での様子を聞かれることが多いです。

 

問診に加え、知能検査と他の心理検査も並行して行うことがあり、ADHDを疑うケースではCAARS成人ADHDの症状重症度を把握するための評価尺度)、自閉症を疑う場合にはAQ-J(自閉症 スペ ク トラム指数(AQ)日本語版)などが用いられます。(これらの検査は当施設でも受けていただくことが可能です)

 

 子どものケースでは、学校の勧めで受診することも多く、子ども本人が言葉で困り事を説明することが難しかったり、保護者も学校での子どもの様子をよく知らなかったりすることがあります。そのような場合には、主治医が担任の先生にお願いして、学校での様子を行動評価表で報告してもらうこともあります。 

知能検査の数値によって診断がつくのですか

IQが〇点以下なら発達障害」とか、「4つの指標値の差が〇点以上あれば発達障害」といった基準があるかのようにおっしゃる方がいらっしゃいます。繰り返しになりますが、まず重要なことは診断名をつけることではなくて、”日常生活で生じている困り事への背景にある知的な特性を推測し、対処を考えること”ではないでしょうか。

 

WISCWAISでは全検査IQ4つの指標値 (WISC-Ⅴでは5つの指標値) が得られます。全検査IQが低いケースでは自立して生活できる日常の範囲が狭くなっていることが考えられます。また4つ(または5つ)の指標値の間の差が大きい場合(統計的な有意差がある場合)は、生活上の不便が多々生じていることが推測されます。

 

このようなことが知能検査からわかるので、結果報告の面接ではレポートをお渡しして、数値だけでなく、具体的な対処法もお伝えしています。

診断が必要なケースとはどのようなケースですか

医療のサポートが必要と考えられるケースには医療機関名への受診をご提案しています。医療機関を受診するメリットとして、次のようなものが考えられるでしょう。

 

1.服薬により日常生活の質が大きく改善するかもしれません。

2.精神障害者手帳(知的障害がある子どもは療育手帳)が取得できれば、障害の程度・内容・ニーズによってさまざまな医療・福祉サービスが利用できるようになります。

 3.診断がつくことで、困り事の原因がご自身や養育者にあるわけでないとわかり、自責感が軽減されるかもしれません。

 

さいごに

 

 以上は、私が小児科・精神科・心療内科・学校での経験を踏まえ、心理職の視点から述べた情報となります。

 

当機関での知能検査の受検のご希望が増えており、202312月現在、一ヶ月ほどお待ちいただいている状況で、大変ありがたく思っております。これからも受検者とご家族のお困りに沿ったご提案ができるよう務めて参ります。

 

(竹田)