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学習障害は学齢で現れ方が異なります

 

 

学習障害という言葉を聞いたことがありますか?

学習障害は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」に困難が生じている状態をいい、子どもの日常生活に大きな影響をもたらします。

しかし周囲が学習障害に気づけず、学力不振を怠けや勉強嫌いのせいにして子どもが辛い思いをすることがよく起きています。

 

子どもの学齢が進むと、学習内容が難しく複雑になっていくため、学習障害の現れ方も異なってきます。

小学校低学年では目だ立たなかった学習上の困難が学齢が進んで明らかになることもあります。

学習障害が学齢により、どのように異なった現れ方となるかを述べてみます。

 

 

小学校低学年での学習障害

ひらがな、カタカナの読み書きにつまづきがあるかを中心に確認しましょう。

 

ž   拗音(「がっこう」「きゅうしょく」などの小さい“っ”“ゅ“)、促音(「チーズ」のように伸ばす音)の読み書きで生じる問題

ž   似たような文字を取り間違える(「き」と「さ」)

ž   鏡文字(左右が逆転した文字を書く。ただし左利きの子どもは、利き手の影響かも)

ž   音読の困難(授業中に他の児童が教科書を読んでいるのを聞いて耳から記憶し、読めているように見えることがあります)

ž   読めるが流暢さに欠ける、文末に誤りがある(「ました」なのに「でした」と読むなど)、単語や文節のまとまりで読めない、など

  

句読点(、)や文末の。を付け忘れる、濁点・半濁点(“ 。)をしばしば忘れるのは不注意のためかもしれせん。

 

小学校に入学して間もない頃には学習障害かどうかを判断するのは難しいこともあります。

就学前にすでに読み書きを習得している子も少なからずいて、そうでない子どもとの差がまだ大きいからです。

着席して集中力を保つ、鉛筆を正しく持つ、正しい姿勢で書く、といった学習の構えを身につけるにはどの子どもにとってもある程度の時間が必要です。

 

 

小学校3・4年生頃の学習障害

学習の内容が抽象的になるため(いわゆる「10歳の壁」)、学習障害が表面に出てくる学齢です。 

 

算数

ž   筆算が苦手(桁が揃わない、繰り上がり・繰り下がりの数を右肩に書く時にぐちゃぐちゃになる)

ž   小数点、大きな数、分数の扱いが苦手

・文章題が苦手(文章を読みながら内容を理解することが難しい)

 

漢字学習

ž   画数の多い漢字が出てくるようになって読み書きの困難が生じる

ž   書き順に従って一画ずつ漢字を書いていく課題を嫌がる

 

小学校高学年以降の学習障害

英語の学習が始まり、アルファベットの習得のつまずきから学習障害が明らかになるかもしれません。

 

英語

ž   似たような形のアルファベットの区別が困難(bとd pとq

ž   整った形のアルファベットを書くことが難しい 

ž   ノートの線を使ってアルファベットを書くことが困難

ž   英単語を読んだり、つづりを記憶したりが難しい

 

英語は必ずしもつづりと読みが一致せず、例えば I は単語の中で“アイ”と読んだり“イ”と読んだりします。

 

どちらの読み方になるかは、前後のつづりによって決まるのですが、学習障害のある子どもにとっては混乱の種になります。

 

算数・数学

・グラフ、表、図(展開図、立体図、面積の理解)が苦手

・関数を使った数式の理解が困難

 

学習障害を把握するための心理検査

学習障害があるか、どのような困難が生じているのかを知るためには心理検査を行います。

WISCは必須です。知的な遅れがないことが学習障害の条件になるためです。

 

WISCにくわえ、学習障害に特化した心理検査も行います。

・「読み書きスクリーニング検査 宇野彰著 インテルナ出版」

・「特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン 稲垣真澄編 診断と治療社」

は標準的に用いられている検査だと思います。

 以上の検査は子どもに実施します。

 

学校の先生に記入してもらうものとして「LDI-R LD判断のための調査票 上野一彦他」があります。

 

ほかにも学習障害を知るための心理検査はいくつかありますが、学校での学習場面での様子を担任などから情報提供をお願いすることは大変重要です。

 

 

当施設での支援

  学習障害の診断には知的障害ではないことが前提条件となっています。

しかし知的な遅れのあるなしに関わらず、子どもが学習をする上で困っているのなら支援を考える必要があるでしょう。

 

当施設は医療機関ではないため学習障害の診断はできませんが、ご相談いただけましたら、まず学校やご家庭でのお子様の学習の様子について詳しくおうかがいし、必要に応じてWISCにプラスして上記の他の心理検査をご用意しお勧めしています。

 

検査の結果を踏まえ、学校での合理的配慮(診断名がなくてもお願いすることができます)や家庭でのサポートをご一緒に考えます。

 

どうぞご利用ください。

(竹田)

 

 

【参考】

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター

http://cpedd.nise.go.jp/rikai/about/ld

 

読み書きスクリーニング検査」 宇野彰著 インテルナ出版

 

特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン」 稲垣真澄編 診断と治療社

 

「ディスレクシア入門」 加藤醇子著 日本評論社