はじめに
子どもの頭に、髪の毛が抜けてしまってハゲができているのを見つけたら・・・。親御さんはとても驚き、強い不安を感じるのではないでしょうか。
子どもの毛が抜けてしまう病気には、円形脱毛症と抜毛症の二つが考えられます。それぞれについて詳しい症状と対応を書いてみました。
円形脱毛症
頭部に円形の脱毛部分ができます。複数箇所の脱毛部分ができることもあります。自己免疫が関係していると考えられており、皮膚科で治療が受けられます。しかし子どもにこの症状があること自体は、親子にとってストレスとなりますから、親子間に緊張関係が生じる可能性もあるでしょう。そのような意味でストレスへの対処も考える必要があるかもしれません。
皮膚科で塗り薬を処方してもらいましょう。並行して親子関係について振り返ってみたり、子どもとの関わり方を見直してみることもよいかもしれません。例えば親が毎晩、寝る前に塗り薬を塗ってやりながら、子どもの話をゆっくりと聞いてやる時間をとってみてはどうでしょう。親が子どもを大切に思う気持ちが伝わり、子どもの安心感につながるでしょう。
抜毛症
子どもが自分で髪の毛を抜いてしまうことで、脱毛部分ができます。脱毛部分はまとまっていなくて、広範囲になることもあります。利き手の側のおでこの上や耳の近く、あるいは頭頂部などの毛髪を抜いてしまうことが多いですが、中には眉毛やまつげまで抜いてしまうケースもあります。
抜いた毛髪には毛根が付いているので、子ども部屋の勉強机の上や近くの床など、落ちたところにぺたりと張り付いています。この点で円形脱毛症と区別することができます。まとまった量の毛髪が落ちているのを見て、親御さんはぎくりとすると思います。親から毛を抜かないよう注意されると、子どもは抜いた毛を隠すこともあります。その一方で、初期には脱毛部分があることを気にせず、隠すことなく人前に出る、という不思議な行動も起こります。(この病気が長引いたときは脱毛部分が相当に広くなるので、本人は隠すようになります) 親にしてみたら、毛を抜く行為とともに、髪の毛のない姿で人目に触れられるのは恥ずかしいことですし、このような行動をたしなめたり、叱ったりして、ますます親子関係がこじれてしまうことが起きがちです。
抜毛は癖になりやすく、早めの対応が重要です。ストレスがかかったり、イライラしたりした時に髪を抜いてスッキリした気分を味わいたい、と子どもが思うようになってしまうこともあるからです。癖になってしまうと抜毛をやめることにかなりの時間を要します。
症状が重い場合は抗うつ薬を用いることもあります。これは抜毛の行動の背景に強迫(小さなことが気になり、こだわってしまう精神症状)があるとという考えから、強迫の改善に抗うつ薬を用いているのです。抗うつ薬は児童精神科で処方されます。
抜毛症がある子どものカウンセリングでは、子どものストレスを減らし、ストレス解消のための抜毛以外の方法を考えていきます。また親御様のカウンセリングでは、子どものストレスを軽減する関わり方を一緒に考えていきます。
さいごに
子どもの髪が抜けた状態は痛々しいものです。脱毛部分を目にするたびに、親は不安を感じずにはいられないでしょう。ですが不安をそのまま子どもに投げかけてしまうと、子どもにさらなるストレスをかけてしまうことになります。どうぞお一人で悩まず、カウンセリングで不安をお話しください。また児童精神科での治療が必要と思われるケースには、さいたま市と近隣で信頼できる医療機関をご紹介いたします。どうぞご相談ください。
(竹田)